CURRY & ME
そもそもの話、自分はなぜカレーという料理にこんなにも魅せられているのか?
ときを戻せば2016年春の話になります。出産を控えた妻が(あ、既婚者です笑)、関西に引っ越したタイミングで、わたしが一人暮らしをすることになった東京・高田馬場という街。そこにあった「カリーライス専門店エチオピア」というお店との出会いがすべての始まりでした。既にエチオピアのカレーは学生時代から食べてはいたのですが、自宅の近所にあって毎日毎晩食べてもよいというこのシチュエーションは特別なものでした。喩えていうなら、幼なじみが最高のパートナーだった、的な。瞬く間に虜となり、通うたびに辛さのレベルを一段階ずつ上げたりなどしつつ無限の階段をのぼりはじめたのです。
ところが半年ほどでその生活は終わりを迎えます。子育てを関西でするために東京から離れることになったのです。とはいえ、その時点では、そこまで事態を深刻には捉えていませんでした。きっと関西にもエチオピアの支店はあるだろう(それか似たような味のお店はあるだろう)くらいに捉えていたのです。
が、しかし、ぜんぜん見つからない。
いろいろなカレー屋に通えども通えども。
エチオピアの味というものは、あんなにも唯一無二のものだったのか…!
そう、わたくし、いまでこそさまざまなカレーが好きでその違いを楽しんでいるけれど、最初のモチベーションは全く違って、エチオピアという神の似姿をもとめてさまよい歩き、食べては「違う」と言い続けるような人間だったのです(と、過去形のように書きましたが、いまでもその側面はあるかもしれません。そしていまだに関西においてエチオピアのようなカレーは見つかっていません)
子供の誕生後、大阪・本町に仕事で通うことになったのですが、ちょうど時を同じくして「大阪スパイスカレーブーム」なるものが巷を賑わせていました。従来カレーとは、小麦粉にスパイスを混ぜ煮込んだ「ルー」を使ったものが主流だったのに対し、ルーを使わず直接スパイスを炒めてつくるところが新しかったスパイスカレー。粉もんの町といわれる大阪で、逆に(小麦)粉をつかわないでつくるカレーが流行ったというのは面白いですよね。
ワンプレートに華やかに盛り付け、混ぜ崩しながら食べるところはスリランカ・南インドのスタイルに源流をもつと言われるスパイスカレーですが、あまり「何が正解か」というところには縛られず、それぞれのお店が自由な発想で進化させ続けていったのがこのブームの原動力だったと言われています(他人とは少しでも違うものをつくってやろうという大阪人の気質にもあっていたようです)
エチオピアという最高神に帰依しつつも、少しずつ心を開き、大阪スパイスカレーの魅力に目を向けるようになっていったのが2018年頃のわたしの心境です。たしかにこのカレーはエチオピアとは違う、しかしそれは何が違うのか、料理やスパイスの知識がないものの、自分なりに言葉として編み上げ、書き記していったのです。